先天白内障
先天白内障とは
先天白内障とは、先天的な素因によって生まれつき水晶体がにごる病気です。
出生時にすでに起こっているものが多いですが、成長とともに現れ進行するものもあり、その場合は「発達白内障」ともいわれます。
基本的に両目に発症することが多いですが、片目のみに起こる事もあります。約1万人に3人に起こる稀な病気ですが、瞳の中に白い濁りがある場合には、必ず眼科を受診して的確な診断を受ける事が大切です。
中には水晶体の一部のみを覆う白内障(部分白内障)もあり、その場合は10歳までの間に混濁が始まります。部分白内障では視力は比較的良好です。
先天白内障の原因
先天白内障には様々な原因があります。
遺伝(複数の遺伝子疾患または染色体異常症)によることもあれば、代謝性疾患(ガラクトース血栓など)に関連することもあり、子宮の中で感染した感染症(風疹、トキソプラズマ、サイトメガロウイルスなど)や妊娠中の母親の病気によることもあります。
片目だけの白内障(片眼性白内障)の場合は、家族歴や全身の病気とは関係ない場合が多く、外傷などが原因にあります。
注意すべき症状
瞳の中に白い濁りがあることに気づいたら、直ちに眼科を受診してください。
ご両親やご兄弟に先天白内障の方がいらっしゃる場合には、生まれてすぐに眼科で検査したほうが良いでしょう。
多くの新生児で見つかる白内障は小さく視力の発達の妨げにならないことが多いのですが、一部の子供で重度の視力障害をきたします。
高度の両眼性先天白内障では、生後10週以降になると眼振(眼の揺れ)や異常な目の動きが目立ってきます。片眼性先天白内障の場合には、生後3、4カ月になると白内障のほうの眼が『斜視』になってきます。
このような症状が出た場合には、早急に手術が必要です。片眼性で発見が遅れた場合には手術しても視力は向上しませんので、細心の注意を払いましょう。
先天白内障の治療・手術
乳児期の手術法は、にごった水晶体と硝子体前部を切除する方法が一般的です。
先天白内障は成人に起こる白内障と違って、視覚刺激を遮断するため早く発見して手術を行わないと重度の弱視となってしまう可能性があります。これは目の発達の重要な時期に、視覚刺激が十分に与えられなかったことにより起こります。先天白内障の最大の問題といえるでしょう。
手術後はメガネやコンタクトレンズで矯正し、弱視訓練が必要不可欠です。良い視力を獲得するには、両眼性は生後10~12週、片眼性では生後6週までに手術を受ける必要があります。
2歳以降に白内障が進行して手術が必要になった場合には、十分な術前検査をして合併症のリスクがなければ、ご家族とご相談のうえ成人と同じように眼内レンズを挿入する手術をおこないます。しかし目の成長によって眼内レンズの度数が合わなくなること、合併症や再手術の頻度が高いこと、長期的な安全性が確立していないなどの問題が残っています。
術後には必ず定期的な検査が必要です。良い視力を伸ばすために、就学後までご家庭で弱視訓練に取り組むことも必要です。また視力が順調に伸びて年長になっても、後発白内障、緑内障、網膜剥離、斜視などを併発することがあるため、長期にわたって定期的に眼科で検査を受けることが大切です。
※中央眼科グループでは、先天白内障の患者さまは他院をご紹介させていただいております。
監修者 勅使川原 剛|横須賀中央眼科 院長
医学博士 MBA
MD. PhD. MBA. MA (Interpretation & Translation)
略歴
- 聖路加国際病院外科系レジデント
- 横浜市立大学医学部附属病院
- University of California San Francisco (UCSF)
- University of Bath, UK
- 横浜市立大学医学部 眼科 臨床教授
所属学会
- 日本眼科学会
- 日本臨床眼科学会
- 日本眼科手術学会
- 日本白内障屈折矯正学会
- ARVO (The Association for Rearch in Vision and Ophthalmology)
- ESCRS ( European Society of Cataract & Refractive Surgeon)